『イラクサ』アリス・マンロー~読書ブログ22

カナダ 2001年

難易度 ★★★ (本を読みなれている方向け)




「チェーホフの正統な後継者」

職場の同僚におススメするような本を紹介するつもりの読書ブログですが、またもや番外編。久しぶりにマンローを読んだら、やっぱりよかったので、今回は『イラクサ』をご紹介。2013年にノーベル文学賞を受賞している超有名な作家さんなので、完成度の高さは保証します! でも誰もが読んで楽しめるかと言うと、好き嫌いは分かれるんじゃないかな~。なので、職場で気軽におススメはできないかな~。


カバーに「チェーホフの正統な後継者」とあるんですけど、これがおススメできないと言った理由。チェーホフ的な短編小説とは、日常生活を漠然ととらえていて、はっきりした起承転結もわからないような作品のことです。ある短編小説を読んで、「え、これで終わりなの? 意味わかんないんだけど?」という感想が出てきたら、それはおそらくチェーホフ的な短編小説ではないかと思われます(笑)。


わたしはこの手の小説を読むたびに、長らくそんな感想でした。挙句、「この作家は下手なのか? 話の盛り上げ方も知らないのか?」と、かなりとんちんかんな感想まで持っていた(大笑) これは短編小説のひとつのジャンルなんだ、こういうものなんだとわかってからは、恥ずかしい感想は出てこなくなりました(笑)


簡素さと緻密さ

もうひとつ、万人向けじゃないな~と思うのは、文章です。


書き出しが簡素で、とっつきにくい! あまり背景や人間関係の説明をせず、読み進んでいくうちにじわじわとわかってくる書き方なんですね。わたしはそこがいい味わいになっていると思うけど、ちょっと忍耐は必要だと思います。


一方で、描写は緻密です。情景描写は細かくて、一文一文を楽しめます。


さらに心理描写がいいんです! 小説は「心のひだを書く」なんて言いますけど、本当に心のひだの一枚一枚を丹念に描写していく。わたしはマンローの心理描写を読んでいると、自分の経験と照らし合わせて、あの経験はそういうことだったんだなあと腑に落ちたりします。



「長編小説のようなずっしりとした読後感」

と、カバーに書いてあります。そのとおりだと思います。


マンロー作品は時間の扱い方が独特で、一篇のあいだに数十年という時間が経っていることが多いです。短編という短い文章の中に長い時間がぎゅっと凝縮されていて、それを俯瞰する感じ。だからマンローを読むと、長い時間を過ごしたなあと思うと同時に、充実した読書時間を過ごしたなあと、妙に満たされます。


人生というのは、うまくいくときもいかないときもある。甘さとほろ苦さはいつも隣り合わせ。それを感傷的になりすぎず、押しつけがましくなく、味わい深く書いているところが好きです。


内容(テーマ)自体は決して難しくなく、むしろ誰もが共感できるものと思います。なので、「チェーホフ」と「文章」さえクリアできれば、すばらしい読書タイムが待っています! チャレンジしてみてくださいね!


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