『贖罪』イアン・マキューアン~読書ブログ19

イギリス 2001年

難易度 ★★★(本を読みなれている方向けだと思います)


万人向けではないけれど……

この読書ブログは読みやすい海外小説をご紹介することを目指しているんだけど、今回はマキューアンです。イギリスの文壇では、カズオ・イシグロと並び称されると聞いて、イシグロを紹介したからには、いつかはマキューアンも!と思っていました。が、マキューアンは万人向けではないと思う…。


それでも『贖罪』を読んだとき、あまりの傑作ぶりにクラクラして、しばらくのあいだ興奮が冷めなかったから、紹介したかったのです! なので、今回のブログはわたしの趣味に突っ走った番外編です。


少女ブライオニーの罪とつぐない

舞台は1935年のイギリス。その日地方旧家タリス家に親戚が集まることになりました。主人公は13歳の末娘ブライオニー。彼女は作家志望で、最愛の兄のために戯曲を書き上げ、上演しようとはりきっていますが、なかなか思い通りにはいかない。


その日、姉セシーリアは使用人の息子ロビーと思いを遂げるのですが、ブライオニーはその中に入って邪魔します。さらにロビーが従姉ローラをレイプしたと嘘の証言をして、ロビーを刑務所送りにし、その後戦争が始まります。


このブライオニーという少女が本当にかわいくない! 子どもならではの独りよがりな正義を振りかざしている姿にムカつく~!と、最初は共感できませんでした。すべてを管理、支配することが好きな性格で、それは劇の上演を通してはっきりと描かれています(こういう性格紹介もうまいです)。


振り返ると、このときのブライオニーは本当に子どもだった。そしてこのあととてもせつない展開になっていくのです。


精緻な文章

マキューアンの描写は本当に細かく、オリジナリティがあると思います。いわゆる「手垢にまみれた表現」がない、惰性で書いていない、自分の目で見て、自分の言葉で書こうとしている作家さん。この長さで、一文一文気を抜かずに書くなんて、意識が遠のいてしまいそうです。読んでいるほうは楽しいけどね~。


大胆な構成

この作品の構成は細かく計算され、しかもダイナミックです! この対比がひとつのハーモニーになっているところがすばらしいのよ~! 構成がいちばんの読みどころだと思うので、多くは書きません。


緻密なしかけ

この作品は本当にしかけが多いです。しかけに気づくと、そういうことか~と全体がわかるようになっています。わたしはこういうのに悶えます~。


一例です。


下巻で突然文体が切り替わり、「意識の流れ」という文学手法が使われます。この手法は人間の頭の中で流れている思考をそのまま書きだすというもの。なんで突然「意識の流れ」?と違和感があったんだけど、ブライオニーはヴァージニア・ウルフが好きだったことを思い出して、納得。ウルフは「意識の流れ」の代表的な作家の一人なので、これが最終章の伏線になっているんですね(すみません、わかる人にはかなりのネタバレかも……)。


こういうしかけを掘り出して読んでみるのも面白いと思います。しかけが鍵となって、作品のドアが開いていきます。


ちょっと読みにくい作品かもしれないけど、読んでみたら、大丈夫だったよ~という人も多いはず! チャレンジしてみてください!


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