『熊と踊れ(上、下)』アンデシュ・ルースルンド&ステファン・トゥンベリ~読書ブログ14

スウェーデン、2014年(つい最近ですが、作品の舞台は1990年代初め)

難易度 ★★(少し読みにくい文章です)



銀行強盗ものサスペンス

不思議なタイトルだなぁと思って読んでみたら、大当たり! ちょうど読み終えたところで、うまく感想がまとまらないんだけど、面白かったですよ~!


物語は連続銀行強盗犯と彼らを追う警部のサスペンス。犯人と警察の二つの視点で進んでいきます。でも犯罪小説として読むと……普通かもしれないです。奇想天外なトリックやどんでん返しはありません。それでもわたしは楽しめたけど。


実は家族の物語

この作品のキモはサスペンスではなく人間ドラマの部分、犯人たちの家族の物語だと思います。犯人は三兄弟+幼なじみ。家族の絆でがっちりと固まった三兄弟と、彼らの家族になりたい幼なじみが銀行強盗を繰り返していく。回数を重ねるにつれ、人間関係も変化していく。警察サイドも面白いけど、犯人サイドのほうがより面白く、感情移入してしまいました。


文学ではよく「人間を書く」と言われます。厚みのあるリアルな人間像を書いてこそ文学、って意味ですね。でもこの作品は「人間関係を書く」という印象でした。生きているとつねにつきまとわれ、悩みの種ではあるけど、一人では寂しすぎる、人間関係ってやつですよ! 特に家族関係は、積み重なった時間に愛情と憎しみが濃厚に混ざり合っていて、断ち切ることもできない。退職したら切れてしまう職場の人間関係なんかとは根本的なところが違うんですよね。家族の絆の正体はこれだよ、と見せつけられた気がしました。この作品の家族は極端だけど、家族という集団が持つ普遍的な何かが書かれていると思います。


実話を基にした小説

あとがきに、三兄弟は実は四兄弟で、銀行強盗に参加しなかった一人(作者のトゥンベリ)が自分の家族をモデルに書いたとあって、びっくりしました! 彼が兄弟たちと対話して書き上げたのだそう。どうりで崩壊している家族の姿が生々しいはずだ~。


そしてあとがきの、ある兄弟のコメント、「この本のおかげで前に進めるだろう。お互いを、ただの血の繋がりではなく個人として見ることができるようになるはずだ」に救いを感じられて、よかったです。悲しくせつない物語、しかも兄弟たちはまだ生きていると思うとよけいにね。


文章は最初読みづらかったです。体言止め(名詞で終わる)の連発で、単語のイメージがパッパッと浮かぶんだけど、自分で単語同士を関連づけなきゃならない。だから文章がすんなりと入ってこない。わたしは読み進んでいくうちに慣れたけど、ダメな人はダメかもしれないです。この文章のせいで、読みはじめたときは読書ブログには書かないつもりだったけど、結局マイナス要素よりもプラス要素が大きかったなぁ。


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