『深夜プラス1』ギャビン・ライアル~読書ブログ12

イギリス、1965年(ベトナム戦争が激化している頃。ケータイもスパイ衛星もありません)

難易度 ★★




新訳登場

次は何を紹介しようかと本棚を眺め、『深夜プラス1』なら鉄板だろうけど、絶版だろうと思ったら、2016年に新訳が出版されていました。名作は息が長いなぁ。あとがきに、1991年出版の『ミステリ・ハンドブック』のスリラー部門第1位にランクインしていたとあり、そうだった、ひと昔前は本当に人気の高い冒険小説だったのよねと思い出しました。


ストーリーは、主人公の元エージェントのキャントンが、ある実業家をパリからリヒテンシュタインまで送り届ける、というだけです。が、もちろんすんなりと行くわけがない。ボディーガードのガンマンは問題を抱え、実業家は警察に追われている上隠しごとがあり、その秘書は不可解な行動をとり、待ち伏せやら銃撃戦やら、キャントンの過去もからんで、盛りだくさんな展開になっていきます。PCやケータイのない時代ならではの不便さもいい味わいです。


改めて読み返してみて、この作品は広く浅く読まれるベストセラーというより、固定ファンがついて支持されたんじゃないかなと思いました。とにかくかっこいいんだけど、そのかっこよさは女子受けするものではなく、たぶん男性向け。おばさんのわたしですが、男目線になったつもりで、そのかっこよさをご紹介したいと思います。


男の生き様がかっこいい!

女子がキャーッというかっこよさではなく、たぶん男が惚れ込む男たちなんですよ。キャントンがプロとして危険をくぐり抜け、困難な仕事をやり遂げようとする姿は、男の生き様を感じさせます。そして相棒のガンマン、ハーヴェイは腕利きながら、大きな弱点を抱えていて、その葛藤と危なっかしさが人間味にあふれています。この二人が、女は入れない、男の世界を作り上げているかんじです(が、決してBL臭はないので、そっちの期待はしないでください)。


こだわりがかっこいい!

特に銃と車へのこだわりが細かく書かれています。お酒もいろいろな種類が出てきます。それらがプロっぽさを醸し出していて、いかにもできる男ってかんじで、かっこいいんです(ただしこれを女目線で読むと、ただのうんちく男ということになりますので、要注意)。


語り口がかっこいい!

一貫してキャントンの視点で書かれているのですが、彼はやや斜にかまえた性格のようで、いちいち皮肉を語ります。それが小気味いいんです。読みながら、ニヤッと笑ってしまう。翻訳の方は彼の皮肉を、大げさでなくさらりと表現するのに苦労したのではないかと思います(しかしこの皮肉のせいで文章がわかりにくくなっている気もする)。


翻訳については、今回二冊並べて読み比べてみたけど、わたしはどっちもどっちでした。この一文は菊池訳がいいけど、こっちの一文は鈴木訳がいいな、ってかんじで。どちらもところどころ意味がわかりにくい箇所があり、二冊で補いながら読めたことはよかったけど、それは本当によかったことなのか?(←キャントン風皮肉のつもり)


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