『ハティのはてしない空』カービー・ラーソン~読書ブログ6

アメリカ、2006年(でも舞台は約100年前の1918年のアメリカ)

難易度 ★(児童書なので、読みやすいです)



元気が出る本

この人いったい年間で何冊くらい児童書を読んでいるのか?という友人がいます。彼女が最近読んだ中ではヒット作!と薦めてくれたのがこの本。


薦められて思ったのは、聞いたこともない出版社だなあ、くらいで(すみません)。でも読んでみたら、たしかにこの作品はおもしろいし、元気が出る! アメリカでは数々の賞を受賞しているようです。でも日本ではあまり知られていないですよね~。



16歳の少女の開拓者生活

舞台は開拓時代のアメリカ。『大草原の小さな家』あたりのイメージです。孤児で、親戚を転々としていた16歳の少女ハティが、亡くなったおじさんからの遺言書を受け取ります。それは「10ヶ月で、480本の杭を打って柵を作り、開墾すれば、モンタナに320エーカーの土地を得られる権利」というもので、自分の居場所がほしいハティは、相棒の猫ヒゲちゃんとともに、開拓者生活を始めます。


16歳の少女が一人で開拓?と思ったけど、この作品はいろいろな点でリアル! だから大人が読んでも楽しめるのかも。



リアルな生活描写

生活の細部がリアルに書かれています。たとえば、厳寒の朝、素手で井戸の水を汲もうとしたら、金属に手がはりついて、死にかけた、など。こういうリアルな生活描写のおかげで、ハティという人間が物語の世界の人ではなく、実在したんだと思わせてくれます……と思ったら、ハティにはモデルがあり、作者の曾祖母だったとのこと。


この作品が書かれたのは2006年だから、作者はこの時代についてかなり熱心に調べたんだろうなあ。大切に書き上げた労作だと思います。


開拓者生活の描写だけでも面白かったと思うけど、さらに戦時中のアメリカがどんな風だったかも織り込まれています。それが物語に社会的なテーマを加えて、作品に厚みを与えています。



リアルな現実対処法

ハティの暮らしはなかなか過酷なんですが、そのひとつずつにとても現実的に対処していく姿が印象的。ユーモアと現実的な行動力。これ以上すばらしい現実対処法があるだろうか! と思います。ちょっとの不幸は笑い飛ばして、今できることをやる。それは片づけをするとか、豆を煮るとか、本当に日常的なことなんですけどね。ヴォルテールの『カンディード』で書かれている、いわゆる「庭の哲学」と同じことを言っていると思います(「議論するより、庭を耕そう(働こう))。わたしも見習わなきゃな~。


もうひとつ、ハティの過酷な生活をやわらげてくれたのは、個性的な隣人たちとの交流。家畜の皆さんを含めて! 人生は助け合って生きていくことが必要だし、楽になるし、喜びにもなる。これも有効な現実対処法ですね。



リアルな人生観

物語というものは、がんばった善人は報われて、悪人は懲らしめられるのが王道。そういう物語を読んで、読者はよい行いをしよう、努力しようと元気づけられる。それはそれでいいと思います。


ところがこの作者の価値観はそういうものではないみたい。わたしも中年ですからね、いろいろな経験をしてきたわけですよ!(笑) どんなにがんばっても結果が出ないことはあるし、要領のよい悪人がうまく世の中を渡っていくことも見てきました。物語のような予定調和や勧善懲悪は、現実ではいつでも起こるわけではないです(まったくないとは言わないが)。この作品では意外なラストが待っています。それだからかえって中年のわたしは元気づけられました(笑)。


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