『おれの中の殺し屋』ジム・トンプスン~読書ブログ5

アメリカ、1952年(日本は昭和27年。日米安保が発効した年でした)

難易度 ★(切れのある、読みやすい文章です。ちょっと言葉が下品だけど)



絶版本です

すみませんが、古本屋さんか図書館で探してみてください。『内なる殺人者』というタイトルでも出版されていました。わたしはどちらも読んだけど、『おれの中の殺し屋』の訳のほうが荒っぽく、しっくりきました。わたしの中ではタイトルがすでに勝っている。


今回どうして絶版本を取り上げたのかと言うと、ジム・トンプスンを読んだことのある人があまりにも少ないからです。読書家の友人たちですら知らないって言うし。こんなに完成度の高い作品なのに、どうして知名度が低いの? どうして絶版になっちゃうの? ファンとしては残念な思いがあります。この文庫本では、スティーブン・キングの絶賛解説も収録されているんですよ! それなのにいまいちメジャーになれないのは、やっぱり内容がヤバすぎるからか~?


狂気と暴力

トンプスン作品のテーマはズバリ「狂気と暴力」です。主人公はたいてい悪人で、平然と人を殺します。しかも一人称なので、主人公の視点にどっぷりとつかり、狂気の世界を堪能できます。


本作の主人公ルー・フォードはテキサスの田舎町の保安官助手。彼は周囲に合わせるお人よしで、みんなからちょっとばかだよねと思われています。でもそれは本当の姿を隠すための彼の演技。本当のルーは、頭が切れ、皮肉屋で、殺人衝動を抱え、自分が異常なことまでわかっています。


そんなルーは復讐のために人を殺します。罪のない人まで巻き込んで、笑いながら、屁をこきながら。その後も殺人をごまかすために、次々と犯行を重ねていきます。ルーはちゃんと逃げきれるのかというところも、物語の面白さのひとつです(いや、この人はさっさと捕まったほうがいいとも思うけど……)。


狂った人間の魂

やることなすこと共感できない主人公なんだけど、トンプスンは彼にある種の愛情か衝動を持って、書いていたんじゃないかなという気がします。だって、主人公の魂にぴったりと寄り添って、書かれているんだもの(この主人公相手にそれもどうかと思うが……)。だからルーの狂気の中に、虚無感や絶望感も感じられる。それがこの作品をうすっぺらなサイコキラーものではなく、傑作に仕上げていると思います。


トンプスンはお金に困って作品を書いていたこともあったらしく、当たりはずれが多いです。あんた真面目に書いてんの!と文句を言いたくなる作品もあるけど、本作はまちがいなく傑作。もちろん好き嫌いはあるだろうし、うっかりファンになって、人に薦めると、退かれるかもしれないですけどね。


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